2007年04月21日

序章

こんなにたくさん人が争い死んでいく時代はいやだ。
いったい何人の人と出逢い別れたんだろう?
愛しい人も、子供も、友も、かわいがってくれた人もみんな逝ってしまった。
それなのに私は何故一人、ここで生きないといけないのだろう?
あの子を返して!誰かこの苦しみから助けて!私を元の世界に連れ戻して!


自分の流した涙の生暖かさで私は目が覚めた。
この懐かしい感触…ずっと昔に見慣れていた光景。
間違いなくここは私の部屋だ。
あれは哀しい夢だったのか?
今まで経験したことは長い眠りの中でのことだったのか?
そっと腕を見るとあの時についた傷が残っている。
やっぱり…あの出来事は夢じゃない。

そう言えばあの人のお墓の前にいたおばあさんが
『おまえが嘆き悲しみ、心からこの時代に絶望したら願いは叶う』って言ってたっけ。
そうか…あんなに愛した人が私を残し逝ってしまった時も、私をいつも包んでくれた優しい友人が逝った時も、たくさんの愛情を与えてくれた人達が逝った時も私はそれでもあの時代に残っていた。
でもあの人との忘れ形見、最愛の娘を助けられずに悲しみにくれ戻ってきたのだ。
あの時代に絶望して、すべての愛を奪われて、やっとここに戻ってこれたのに私を打ちのめした時代は何と暖かく優しかったことか。
まるで雨上がりの虹のように美しく輝いていた時代…天渟中原瀛真人天皇が統べる飛鳥浄御原宮から藤原京、平城京のあの時代。


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Posted by jasmintea♪ at 12:10│Comments(0)小説
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