2007年04月21日

新しい生活

浄御原の朝は早い。
明け方寝入った私はすぐ志斐に起こされた。
「これこれ、早く起きなさい」
相変わらずこの人は私に冷たい。
これに着替なさい!と言われ着替えたら、その着方は違うと怒っている。
…だってどう着れば良いか教えてくれなかったじゃない。
今度は髪を結うとかでゴシゴシ引っ張られて痛いし。
たとえば江戸時代はみんな同じような髪型だけどこの時代の女性の髪形はいろいろで大体の人が今で言う「お団子ヘア」にしている。
でもどこにどれだけお団子を作るのかは年齢やイメージで全然違う。
今日の私は頭頂で大き目のお団子をひとつであとの髪は垂らしている。
…ウン、このまま現代に戻っても大丈夫な髪形だな!
そんなことを考えて鏡の中をのぞいていたら皇后様が入ってきた。

「志斐、雨乃の支度はできましたか?」
「はい。如何でしょう?」
「良く似合っていますよ。では参りましょう。」
「あ、あのどちらへ行くのですか?」
「あら志斐ったら何も話してくれてないの。朕には娘がいないから本当の娘のように雨乃のことを思っているのよ。だから大切にしてね。」
皇后様のこの一言を聞いて志斐は蛙を踏んづけてしまったような顔になっていた。
「雨乃、ここでは1日が朝賀と言うあいさつで始まるの。上から順番に朝食を頂き、あいさつを受けるのよ。朕がスメラミコトのところに行きあいさつを終えて帰ってきて朝のご飯を頂く。そしたら次は高市皇子がスメラミコト、朕とあいさつにくる。その次は草壁がスメラミコト、朕、高市皇子にあいさつ。次は大津がスメラミコト、朕、高市皇子、草壁と回るのよ。」
「はい」
「公式の場所では下位のものが上位のものに話しかけることはできないから気を付けてちょうだいね。」
「はい」
「フフ。そんなに緊張しなくて良くてよ。」
顔がこわばっている私を見て皇后様は笑った。
緊張するなと言われても…。
「大名児様、この部屋を出たら皇后様の3歩うしろを歩かれますように」
「わ、わかりました。」
この志斐の言葉で余計に私は緊張してきた。
ともかく裾を踏んで転ばないようにしよう!そんなことを考えながら部屋を出た。

部屋を出るとみんなが立ち止まり、立ったまま頭を垂れて皇后様の通過を待つ。
私はくすぐったいような気分で3歩後ろを歩きスメラミコトの部屋に向かった。
『皇后様のおなりでございます。』
朝の静粛の中に1日の始まりを告げるように案内の声がこだまする。
通されたスメラミコトの私室は広かった。
ここはあいさつを受けるだけの場所らしい。
皇后様が部屋に入って立ったまま頭を下げているとスメラミコトが入室する気配があり椅子に座ったようだ。
「皇后、そちが采女を伴いここに入るのは珍しいことじゃのう。」
スメラミコトはよく通る太くて低い声で話しだした。
「スメラミコト、おはようございます。」
「今朝は何やら嬉しそうではないか。顔がいつもと違うぞ。」
「はい。昨日石川の家からかねてよりお願いしていた大名児が参りました。利発な娘で読み書きができます。この娘と話をしていると何やら楽しくなって参ります。」
「それは良かった。」
と、皇后様に声をかけてから
「大名児、もっと近くに参れ。」
と言われた。
私は皇后様のすぐ後ろまで顔を伏せたまま歩く。
「皇后が気に入る采女とは大変珍しいぞ。」
顔を伏せたままの私に
「お顔をあげて」
と、小さい声で合図された。
「大名児にございます。」
顔をあげた私を息を飲むようにスメラミコトと呼ばれているその人は見つめた。
…何を驚いているのだろう?
「鵜野、、」思わず皇后様の名前を呼んだことがスメラミコトの驚きを表していた。
「鵜野、鵜野、この者は?」
「驚きましたか?」
「……」
「決してお手をつけられませんように。」
と、言い放ち
「大名児、参りましょう」と私を急かされた。
何か口を動かしかけたスメラミコトを無視するように皇后様は歩きだした。


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Posted by jasmintea♪ at 20:29│Comments(2)小説
この記事へのコメント
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Posted by 物書きネット at 2007年04月22日 12:01
物書きネット様、ありがとうございます。
本当は人様にお見せできるような小説ではありません。
ただこの時代が好きで書き出しただけです。
どうにか最後まで書ければ良いなぁ、と思っています。
書き込みありがとうございました。
Posted by 雨乃 at 2007年04月23日 20:03
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