2007年05月07日

想い

その日は1日が、1時間が、1分が長く感じられた。
私は落ち着かない気持ちのまま時間を過ごす。
今まで恋した人や付き合った人もいたけどそれは恋に対する憧れのようなものばかりで、共に人生を歩んでいきたいとか、相手のために何かをしたい、なんて考えたことはなかった。
自分のことより彼、こういう想いはどこから湧いてくるのだろう?
今はただ大津様のために毎日を過ごしたい気持ちと私を見つけてくれて、私を選んでくれてありがとう、と言う感謝の気持ちでいっぱいだった。
何をしてても顔には自然と笑みが浮かんで瀬奈にも不審に思われる始末だった。

なのに、午後になり約束の時間が近づくにつれ今度は不安が大きくなってきた。
皇后様に何も相談せずに大津様と付き合って良いのだろうか?
それに私は現代からきた人間だ。
もし、何かの拍子に現代へ戻ってしまったら大津様はまた孤独になってしまうのだろうか?
大津様の中での私の記憶は無くなってしまうのだろうか?
切ない想いが胸をしめつける。
私がいなくなったら、、大津様は何事もなかったように私以外の人を愛するのだろうか?
私は大きなため息をついた。

「大名児様、今日は一人で微笑まれたり、ため息をつかれたと思ったら涙ぐんだりでどうかなさいましたか?」
この瀬奈の言葉で私は我に返った。
いやだ、本当に涙が出てる。

「いいえ、瀬奈、何ともなくてよ。」
私は精一杯の笑顔で返事をした。
そうだよね。今から思い悩んでも仕方がない。
明日のことは誰にもわからないのだから。
私たちの恋愛はこれから始まろうとしているのだから。



…もし、私が歴史を、大津様の運命を知っていたら彼を愛したのだろうか??
確かに私は無知で何も知らなかった。
そして私達の未来は悲劇的だった。
彼を亡くした時は悲しくて生きる気力もなくなり愛する人とあの世で会うために自ら死のうともした。
そう、私は真実彼を愛していたのだ。
現代に戻ってもまだ私は自分の愛した人を、彼との愛を憶えている。
彼の生きざまと死にざまは命ある限り忘れることはないだろう。
でも、私は彼を救うためにあの時代へ行ったのではなかったのか?
何故彼を止めることができなかったのだろう?

やりきれないくらい襲ってくる苦い思いと激しい後悔のなかに私は一人立ち尽くしていた。
もう傍にいてくれる人は誰もいない。


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Posted by jasmintea♪ at 22:15│Comments(0)小説
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