2007年06月08日

お・き・な??
100歳の翁と言うからかなりのお爺様を想像していた私は驚いた。
…100歳のイメージと目の前の人を結びつけるがどうしても結びつかない。
「遠い世界からはるばるようきたのぅ。」
声をかけられてもまだ返事も忘れ翁を見つめている私を見て柊がクスクス笑っている。
私は慌てて「雨乃にございます。」と頭を下げた。
「菊千代にございます。」
何と、、翁は私の真似をして頭を下げた。
私達3人は顔を見合わせてゲラゲラ笑った。
「ようきた、ようきた。」
翁は背が高く190センチはありそうだ。
私がもっとも驚いたのがその髪と髭。
髪も髭も金色で長く風貌は仙人そのものだった。
が、風貌とは反し精悍な顔立ちで皺も多少はあるが年輪を感じさせるほどではなく肌もつやつやしている。
あまりにも風貌と顔がアンバランスなのである。

私は鳥居の奥の洞窟の部屋に通されてもなお、まだ目の前に座っている翁を見つめていた。
翁はさっきから皇后様の手紙を読んでいた。
一通り読み終えたあと
「まだ尻が青い娘っこじゃのぅ。仕方がない。」と苦笑いしながら言った。
「雨乃、讃良(皇后様)の頼みは3つじゃがそなたが返事を伝えてくれ。」
「はい。わかりました。」
「まず何か緊急な事態が発生した時は讃良の言う通りに誰かをこの里に避難させることは承知する。」
「はい。」
「ちゃんと浄御原の宮を脱出できるよう準備も整えておくから心配はいらぬ。そして二つ目。」
「はい。」
「難波の動静を調べてくれとのこと、これはこっちでも既に着手しておる。もう少しでかなり詳しいことがわかるであろう。これはわかり次第柊を通して連絡する。」
「はい。」
「三つ目、次のスメラミコトには誰が良いか、占をしてくれと言うておる。これは断る。占に頼ってはダメじゃ。己が自分で考えろ、と伝えてくれ。」
「それは…」
「良い良い。そのまま伝えて構わぬ。儂の言う意味がわからぬ讃良ではない。そなたの出した結論なら儂は必ず支持すると付け加えてくれ。」
「はい。わかりました。」
「おぅ、おぅ良い娘じゃ。」
翁はいきなり立ち上がり小さな子供にするように私の髪を撫でた。
「翁は人の未来が見えるのですか?」
「いいや、儂に見えるのは断片的な場面だけじゃ。」
「草壁様は氷高様が玉座に座っている姿が見えるとおっしゃっていました。」
「そのようじゃのぅ。」
「翁、伺っても良いですか?」
「何じゃ?」
「私はいつ現代に戻るのでしょうか?」
「それはどういう意味じゃ。そなたは実の親のところに戻りたくないのか?」
「そういう意味ではありませんが今、戻るのはイヤです。今は皇后様や大津様のそばにいたいのです。」
「うむ…。ちょっと待ちなさい。」
翁が宙に手をかざすと神棚に置いてあった水晶がフワフワ手元に飛んできた。
その水晶を両手に乗せ少し高く掲げ何か呪文のようなことを唱え、翁は瞑想していた。
しばらくして水晶から手を離し私を見た翁の目は潤んでいた。
「あ、翁、どうなさいましたか?」
「いやいや、そなたがどれだけ讃良や大津を想っているのかわかりそなたのその優しい心根に感動したのじゃ。大丈夫じゃ、安心しなさい。そなたはその想いのままに過ごせば良い。」
私は一瞬、私の未来を哀れんで翁の目が潤んだのかと思ったので安心しにっこり微笑みながらお礼を言った。
翁は眩しそうに私を見つめ、
「でものぅ、雨乃。ここにおる柊をどう思うかのう?」と真剣な表情で聞いた。
いきなり自分の話題になった柊は当惑している。
「柊?ですか??柊は優しく、暖かく、勇気もある素晴らしい人です。」
「そうかのぅ、そうかのぅ。それは良かった。そうしたら今からでも遅くない。柊は儂が言うのも何じゃが本当に良い男じゃ。雨乃さえ良かったら柊と一緒になりここで暮らさんかのう。」
「フフ、翁はそのようなことをおっしゃって。柊が困った顔をしています。」
「おお、本当じゃ。柊を怒らすと怖いからこの話はここまでとしよう。でもの、雨乃、」
「はい。」
「柊でなくとも儂の妻となりここで暮らすと言う手もあるぞ。」
「え??」
柊は慌てて翁に目配せをしているが翁は気がつかない。
「何、儂は若いモノには負けてはおらん。そなたを幸せにするぞ。」
「まぁ、菊千代様は柊に負けていないのですか。それはそれは頼もしいことですこと。」
翁は慌てて声の方向に振り向いた。
「おお、茉莉花(まりか)いつからそこにいたのだ??」
「はい。あなた様が求愛をしている時より前からここにおりました。」
「いやいや、儂には茉莉花がおるのをつい忘れとったのじゃ。そうじゃ、年をとると何事も忘れっぽくなっていかん。紹介しよう。讃良のところにおる雨乃じゃ。雨乃、儂の愛しい妻の茉莉花じゃ。」
「初めまして。年をとって忘れられた妻の茉莉花でございます。翁が失礼なことを申し上げました。」と優しい笑みを浮かべながら言った。
「雨乃にございます。よろしくお願いします。」
「茉莉花、今日は雨乃も疲れておるであろう、もう休む支度をしてあげてくれ。」
「わかりました。では雨乃様、行きましょうか。」
「はい。それではおやすみなさいませ。」
「今日はゆっくり休みなさい。」
私は翁のところを辞した。

私がいなくなったあと、柊は翁に詰め寄っていた。
「翁、先ほどの『今からでも遅くない』とはどういうことですか?雨乃様の未来に何を見たのです?吾へ話題をふったり、自分と一緒にここで暮らせなどと戯れに申す方でないことくらいわかります。」
「柊…」
「雨乃様を宮に返さない方が良いとお考えなのですね。教えて下さい。雨乃様にはどんな未来が待っているのですか?」
「…柊、、そちは雨乃を想っておるのか?」
「はい。」
「そなたにしてはキッパリ言うのぅ。叶わぬ想いと承知の上で雨乃を想うのか?」
「雨乃様の心の中には大津様しかいないことはわかっております。」
「そうか…。そこまでわかって覚悟ができておるなら言おう。」
「詳細は言えぬがあの娘は遠くない未来に絶望し自分で命を絶とうとするであろう。」
「そ、それは、どうしてですか?」
「柊、そんな剣幕で怒鳴るでない。」
「申し訳ございません。」
「良いか、今、そちに言えるのはこれだけじゃ。あの娘が自ら命を絶とうとしたらそのときは迷わずに娘のみぞおちを叩き気を失わせるのだ。逡巡があっては手遅れになる。良いな。」
「…」
「その時がくればそちにもわかる。決して目を離すではないぞ。あの娘を守ってあげられるのは柊、そちしかおらん。」
「だから占はやめて下さい、といつも言っておりますのに。」
いつのまにか戻ってきた茉莉花が言った。
「茉莉花…」
「占で未来を見ると苦しむのは翁自身でありますのに。そのようなお気の毒な運命…茉莉花は翁の占が外れるように祈っていますわ。」
翁の占が外れることがないことを知っていて彼女はつぶやいた。


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Posted by jasmintea♪ at 21:09│Comments(2)小説
この記事へのコメント
ずっと無言でスミマセン。
ちゃんと読ませていただいてます。
もう少し読み進めてからコメントしますね♪
Posted by ple at 2007年06月13日 01:46
pleさん、こんばんは♪
読んで下さってありがとうございます!!
コメントは気にしないで下さいね。
読んで下さるだけでとーってもありがたいです。

と、言いながらこの小説もどきを書こうと考え出した頃からずっと気になっていることがあるんです。
一両日に歴史探訪びupする予定ですのでpleさんのご意見をお聞かせ下さるとメッチャ嬉しいです♪(ってうまく書けなくて止まったままになっているんですよね~。でもやはりどうしても気になるので文章にまとめてみようと思っています。)
Posted by 雨乃 at 2007年06月13日 21:58
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